豆知識・お役立ち情報
他の包装方法とスキンパックでメリットやデメリットは違うの?
食品包装の方法には様々ありますが、それらの中から、ここではスキンパックの概要やメリット・デメリットを中心に解説します。
また、スキンパック以外の主な3種類の方法もご紹介していますので、スキンパックの特徴と比較しながら各包装方法の理解も深めてみてください。
スキンパックの概要とメリット・デメリット
スキンパックの概要、蓋材や底剤の素材、メリット・デメリットなどについてご紹介します。
スキンパックとは?
スキンパックとは、トレイ等の上に食品を置いたまま特殊なフィルムをかぶせ、下方から空気を抜いて食品を密封する方法です。
一般的に利用されている通常の真空パックの場合、空気を抜く過程で食品の水分(ドリップ)が流出し、結果として旨みが低下してしまうこともあります。
しかし、スキンパックでは水分(ドリップ)が流出しないため旨みは良好に維持されたまま。食品の鮮度も長期間キープされるため、近年問題視されているフードロスの緩和にも一役買うことでしょう。
肉などの生鮮食品の他、乾物などにも利用可能です。
スキンパックの素材
スキンパックの構成要素は、食品を上から包むフィルム部分(蓋材)と、食品を載せる皿の部分(底材)の2種類です。
蓋材と底材、ともに多様な素材を用いますが、双方に共通する主な素材がEVA(エチレン―酢酸ビニル共重合体)等のオレフィン系樹脂です。
他にも、アイオノマー樹脂やPVDC(塩化ビニリデン樹脂)、EVOH(エチレン―ビニルアルコール等のバリア層)などが用いられることもあります。
また、必要に応じてナイロンを含めることもあります。
スキンパックの主なメリット
スキンパックの主なメリットを2点ほど確認しておきましょう。
生鮮食品等の鮮度が長持ちして消費期限が長くなる
生鮮食品の命とも言える要素が鮮度。
生鮮食品は空気に触れることでみるみる劣化していくため、いかにして食品を空気に触れさせないかという点が、食品包装の要となるテーマでもあります。
スキンパックは、他の真空包装と同様に、またはそれ以上に食品の周辺からしっかりと空気を抜く包装方法です。この特殊な包装方法により、例えば一般的なトレイラップ方式で肉をセットした場合の商品期限が3~5日間であるのに対し、スキンパックはその約3倍となる16日間まで消費期限を延ばすことに成功しました。
これまでの一般的なトレイラップ方式に馴染んでいる消費者は「月初に買った生肉が月末近くまで冷蔵庫で鮮度を保っている」という状況に驚かれるのではないでしょうか。
消費期限が大幅に伸びることで、近年問題視されているフードロスの緩和にもつながることでしょう。
包装された肉などの位置が固定されてズレない
スキンパックされた食品は、蓋材(フィルム)と底材との間で、完全に密閉されます。そのため、生肉から水分(ドリップ)が流出してくる心配がありません。
ドリップは、生肉の旨みを構成する大事な要素。スキンパックの場合、旨みを閉じ込めた状態で長期間の保存で生肉を熟成させることができます。
ですので、ドリップとともに旨みが逃げ出すどころか、逆に旨みが増強されるというメリットがあります。
また、どのような角度になってもドリップが流れてくることはないため、トレイラップされた肉とは異なり、自宅へ持ち帰る際にトレイ全体をポリ袋で覆う必要もありません。
この点において、世界中で懸念されているプラスチック使用量の削減にも貢献することでしょう。
スキンパックの主なデメリット
スキンパックの主なデメリットを3点ほど確認しておきましょう。
スキンパック用の機器の導入コストが高い
他の大半の包装方法と同様にスキンパックも、専用の機器を導入する際の初期コストが高くなることは避けられません。
「良質の包装方法に変更するので、機器の導入コストを商品価格に上乗せします」という説明では、消費者の理解を得られない可能性も。何らかの企業努力によって高額な機器を導入する必要があるでしょう。
食品廃棄コストの削減を検討することが、現実的に有効な対策になるかもしれません。
消費者がスキンパックされた食品に違和感を抱くことがある
スキンパックされた生肉や生魚は、いわば、食品の見た目や形を変えることなく、透明な薄皮一枚で密閉したような状態となります。リアリティある彫刻のようなイメージを抱く方がいるかもしれません。
これまでの一般的なトレイラップに比べ、その見た目や触感、質感などに、当初は違和感を抱く消費者がいらっしゃる可能性もあります。
消費者に「慣れ」が浸透するまで、やや時間がかかるでしょう。
空気を含む食品には向かない
スキンパックは多くのタイプの食品に対して利用可能で、半ば万能とも言える優れた包装方法ですが、他の真空系包装と同様に、空気を含むものの包装には向いていません。
例えば、ケーキやパンなどにスキンパックを施すと、全体が小さく縮んで商品になりません。
その他の主な包装の概要とメリット・デメリット
食品の包装方法には、スキンパック以外にも様々なタイプがあります。
それら多くの包装方法の中から、特に私たちが日常でよく目にする「シュリンク包装」「ピロー包装」「深絞り包装」の3種類について、それぞれの概要やメリット・デメリットを確認してみましょう。
シュリンク包装とは?
シュリンク包装とは、商品の形状にあわせて熱収縮フィルムで商品をタイトに包装する方法です。
スキンパックほどの密閉性はないものの、食品以外にも様々な用途に使用できる汎用性の高さが特徴となります。
シュリンク包装に利用される素材は、塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエチレンの3種類。
塩化ビニールは光沢性に優れ、低温でも収縮するという特徴がある一方、強度が弱いという弱点があります。
ポリプロピレンは安価で耐熱性や耐寒性、防湿性に優れているといく特徴がある一方、塩化ビニールに比べると強度に劣る点は否めません。
また、ポリエチレンは強度の高さが特徴である一方、透明性に劣る点がデメリットです。
それぞれの素材の特徴に応じ、CDやDVD、土産用の菓子類、冷凍ピザ、集積されたヨーグルト類、レターケース、カップ麺など、非常に幅広い包装に活用されています。
シュリンク包装の主なメリット
透明性や光沢性に優れている
素材にもよりますが、透明性や光沢性に優れているため、多色印刷がよく映えます。デザイン性を重視したい商品の包装には特に向いているでしょう。
商品の保護力がある
耐寒性・耐熱性・防湿性・耐水性などが高いため、包装された商品をしっかりと保護します。
複数の商品をまとめて包装できる
「ヨーグルトを3個並べて包装」などのように、複数の商品をまとめて包装できる点もメリットです。大きさの異なる複数の商品も包装できます。
シュリンク包装の主なデメリット
破れやすい
CDや冷凍ピザ、ヨーグルトの包装などをイメージすれば分かると思いますが、シュリンク包装は、人の力や衝撃により破れやすい点がデメリットです。
一部でも包装が破れてしまうと、商品価値は下がってしまうでしょう。
ピンホールが生じることもある
シュリンク包装の表面に、ピンホールと呼ばれる小さな穴が開いてしまうこともあります。
出荷時にピンホールができてしまうと、その穴が大きな破れにつながってしまいます。
ピロー包装とは?
ピローとは「枕」の意味。その意味の通り、商品を枕のような見た目でやさしく包む方法がピロー包装です。
スーパーやコンビニで販売されている菓子パンの包み、たくさんの飴が入った袋状の包み、市販されている風邪薬等が入ったシルバーの包みなどを思い浮かべると、ピロー包装がイメージしやすいかもしれません。「世間でもっとも一般的に見る包装」がピロー包装と考えても良いでしょう。
ピロー包装の材質は、中に収める商品によって様々です。一般的にはOPP、CPP、ONy、LLDPE、PET(ポリエチレンテレフタレート)などが用いられています。
ピロー包装の主なメリット
隙間のない包装が可能
商品の形状にあわせた隙間のない包装ができるため、美しい仕上がりになります。
また、一度破ると復元することが困難なため、盗難防止やいたずら防止にも役立ちます。
ガス充填により消費期限を長くできる
商品を包装して閉じる際、同時に袋内に窒素ガスや炭酸ガスを充填できるため、袋内から多くの酸素を排除できます。
商品の酸化防止につながり、例えば食品を包装すれば消費期限を長くできます。ガスを多く含んでパンパンに膨らんだ菓子類などをイメージしてみてください。
ピロー包装の主なデメリット
商品を真空状態で包装できない
ピロー包装はガスを含むことが前提となるため、商品を真空状態で密閉できません。
一切空気に触れさせたくない商品については、スキンパックなどの別の包装方法を選ぶ必要があります。
熱の影響を受けやすい商品には向いていない
包装のエンド部分を加熱して圧着する方式ですので、熱の影響を受けやすい商品(チョコレートなど)の包装には向いていません。
深絞り包装とは?
深絞り包装とは、蓋材と底材の2種類のフィルムの間に商品をはさみ、空気を抜きながら蓋材フィルムを熱接着する包装方法を言います。ハムやソーセージ、サラダチキンなどによく用いられている包装方法と言えば、イメージが湧きやすいかもしれません。
底剤に使用されている素材は、主にCNy(無延伸ナイロン)とLLDPEやPO(ポリオレフィン)などです。
共押出法で作られている軟らかめのフィルムが使用されています。
蓋材に使用されている素材は、ONyとLLDPEを貼りあわせたものやイージーピールなどで、底材から剥がしやすい素材が用いられています。
深絞り包装の主なメリット
食品の鮮度を長く保てる
酸素を抜いた真空状態で商品を包む形となるため、例えば食品を包装すると鮮度が長持ちします。
ソーセージが常温で長持ちする理由の1つは、深絞り包装にあります。
調味液が食品に浸透しやすくなる
調味液と食材を真空包装にして加熱する方式の商品の場合、深絞り包装にすることで浸透圧が高まり、短時間で均一に調味液を食材へ浸透させることができます。
深絞り包装の主なデメリット
製造工程でやや手間がかかる
深掘り包装をする際には、装置の前で人が直接商品を盛り付けるという工程があります。
全自動で行うことが困難ですので、商品の量産には相応の手間がかかります。
酸素バリア性フィルム等を使用しないと商品の酸化が進む
深掘り包装を含め、商品を真空状態にする包装方法については、酸素バリア性のフィルム等を使用しなければ、酸素が包装の外部から商品へと入り込んでしまうことがあります。
食品包装の役割
スキンパックを含め、食品包装には大事な役割があります。
食品包装の主な4つの役割を確認しておきましょう。
食品の鮮度を長時間キープする役割
食品の鮮度や品質を長時間キープさせるためには、各食品の特徴に応じた包装が不可欠です。
食品の鮮度や品質が長持ちすることで、フードロスなどの社会問題の解消にも役立つことでしょう。
保管・流通の効率を高める役割
同じ商品を同じ包装にして形状を同じくすることで、保管や陳列などの作業効率が大幅に上がります。
また、積載効率も上がることから輸送の効率化にもつながります。
消費者から見ても、形状が似ている商品同士で重ねるなどすれば、保管効率が上がることでしょう。
消費者の利便性を高める役割
商品が包装されていることで持ち運びや取り出しをしやすくなるなど、消費者の利便性も高まります。
湯煎や電子レンジでそのまま温めて食べられる利便性の高い食品についても、高い包装技術なくして実現しません。
販売促進につなげる役割
透明な包装を使用して内容物の姿を明らかにすれば、消費者は安心して購入を検討できます。
また、デザイン性の高い包装であれば、消費者は内容物に高い期待を寄せて購入を検討します。
メーカーにとって包装は、大事な販促活動の1つとなっています。